こんにちは!司法書士の岡崎です!
相続登記を申請するにあたっては、戸籍謄本や住民票等の様々な書面を法務局に提出する必要があります。
今回は相続登記で必要になることがある「被相続人の同一性を証する書面」というものについて書こうと思います。
被相続人の同一性を証する書面とは?
ざっくり言うと、
相続登記を申請するに当たって、「被相続人(亡くなった不動産の所有者)と登記簿上の所有者は同じ人ですよ!」ということを法務局に証明する書面のことです。
具体的にはどのような書面?
具体的には、以下のいずれかの書面を提供することになります。
①住民票の除票の写し(本籍及び登記記録上の住所が記載されているもの)
②戸籍の附票(登記記録上の住所が記載されているもの)
登記簿には名義人の住所と氏名が記載されており、この2つにより登記簿上個人が特定されることになります。
一方、戸籍には本籍と氏名の記載はありますが、住所の記載はありません。
つまり、登記簿と戸籍だけでは、登記簿上の住所の不動産の所有者と戸籍上の本籍の被相続人が同じ人だということを証明できないことになります。
そこで、被相続人の登記簿上の住所と戸籍上の本籍とが異なる場合に、戸籍謄本にプラスアルファの書面として被相続人の同一性を証する書面を提供する必要があります。
こういった趣旨から、登記簿上の住所が戸籍上の本籍と同じ場合は、戸籍謄本がそのまま被相続人の同一性を証する書面となります。
上記①②どちらの書面にも、氏名・住所・本籍が記載されるため、登記簿上の氏名・住所のAさんと戸籍上の氏名・本籍のAさんを結びつけることができるわけです。
ちなみに、住民票の写しには、住所・氏名が記載されますが、役所にある交付申請書の「本籍・筆頭者」欄等にチェックを入れると本籍や筆頭者も記載してもらうことができます。
「被相続人の同一性を証する情報として住民票の写し等が提供された場合における相続による所有権の移転の登記の可否について(通知)」〔平成29年3月23日付法務省民二第175号〕
この点に関し、次のような登記先例が出ています。
相続による所有権の移転の登記の申請において、所有権の登記名義人である被相続人の登記記録上の住所が戸籍の謄本に記載された本籍と異なる場合には、相続を証する市区町村長が職務上作成した情報の一部として、被相続人の同一性を証する情報の提出が必要であるところ、当該情報として、住民票の写し(本籍及び登記記録上の住所が記載されているものに限る。)、戸籍の附票の写し(登記記録上の住所が記載されているものに限る。)又は所有権に関する被相続人名義の登記済証の提供があれば、不在籍証明書及び不在住証明書など他の添付情報の提供を求めることなく被相続人の同一性を確認することができ、当該申請に係る登記をすることができる。
この登記先例によると、
①住民票の写し(本籍及び登記記録上の住所が記載されているもの)
②戸籍の附票の写し(登記記録上の住所が記載されているもの)
③所有権に関する被相続人名義の登記済証
のうちのいずれかが提供されれば、
不在籍証明書および不在住証明書など他の添付情報の提供を求めることなく被相続人の同一性を確認することができ、登記をすることができることになります。
上記①~③の書面が全て提供できないときは?
住民基本台帳法の一部改正前には、住民票の除票や戸籍の附票には5年の保存期間がありました。
保存期間を経過したものは廃棄されることになるので、これらの書面を提供できないことも珍しくありません。
(※住民基本台帳法の一部改正(令和元年6月20日施行)により、平成26年6月20日以降に消除または改製された住民票の除票および戸籍の附票の除票の保存期間が150年間に延長されました。ただし、施行日時点において5年の保存期間が過ぎているものについては、既に廃棄されているため取得できません。)
また、登記済証を失くしてしまったという話もよく聞きます。
それでは、上記①~③の書面が全て提供出来ないパターンの場合はどうしたらよいでしょうか。
法務局によって必要書類の取扱いが異なるため、まずは申請する法務局に相談することになります。
登記実務上は、
A.不在籍証明書・不在住証明書
B.固定資産税の納税証明書又は評価証明書
C.相続人全員の上申書(印鑑証明書付)
等を提供することが多かったようです。
まとめ
被相続人の同一性を証する書面の判断の流れをまとめると以下のようになります。
①住民票の除票の写し又は戸籍の附票(本籍と登記簿上の住所記載のもの)を提供
↓ 提供できない場合
②登記済証を提供
↓ 提供できない場合
③法務局に相談
↓ 法務局の指示に従い
④不在籍証明書・不在住証明書、固定資産税の納税証明書又は評価証明書、相続人全員の上申書等を提供