豊田司法書士事務所ブログ

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2024年3月1日から戸籍の広域交付制度がスタートしました

2024.03.08

2024年3月1日から、戸籍法の一部を改正する法律(令和元年法律第17号)が施行され、広域交付制度がスタートしました。

今回の記事では、この新制度のポイントについて解説したいと思います。


1.戸籍の広域交付制度とは

これまでは、本籍地以外の市区町村役場では戸籍の請求をすることができませんでした。

そのため、本籍地(かつて本籍地があった場所)が複数にまたがる場合、それぞれの本籍地の市区町村役場で戸籍を請求する必要がありました。

相続手続きでは相続関係を確認するために、被相続人の出生から死亡までの戸籍を集める必要があります。

その場合、1か所の本籍地の市区町村役場で戸籍が全て揃うということはほとんどなく、たいていは婚姻や転籍などの事情から複数の本籍地の市区町村役場に戸籍を請求しなければなりませんでした。

また、本籍地が遠方の場合も多く、その場合は直接遠方の窓口まで出向くか、郵送で請求する必要がありました。

このように、従来、相続手続きで使用する戸籍の収集にはかなりの時間と費用がかかることも少なくありませんでした。

広域交付制度がスタートしたことにより、本籍地でない最寄りの市区町村役場1か所で、全国各地の戸籍を取得することができるようになりました。

法務省:戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行) (moj.go.jp)より引用



2.広域交付制度で戸籍を請求できる人

広域交付で戸籍を請求できる人の範囲は以下となります。

①本人

②配偶者

③直系尊属(父母、祖父母など)

④直系卑属(子、孫など)

(兄弟姉妹や叔父叔母による請求はできません。)

注意すべき点は、代理人による請求はできないという点です。

相続手続きを進めるにあたって司法書士などの専門家に依頼することが一般的だと思いますが、司法書士などが職権でする戸籍の請求も代理人による請求に含まれるためできません。

広域交付制度を利用したい場合、①~④の人が必ず市区町村窓口まで出向く必要があります。


3.請求できる戸籍の種類

ここでは細かい説明は省きますが、「戸籍」には様々な種類・分類があります。

広域交付で請求できるのは、戸籍の記載事項全部を記載した「謄本」となります。

戸籍の一部を抜粋して記載した「抄本」や住所移転の履歴が記載された「戸籍の附票」の請求はできません。

また、コンピュータ化されていない一部の戸籍は請求できません。

「コンピュータ化」について調べたり法務省に問い合わせてみたりしたところ、コンピュータ化されていない戸籍とは、改製不適合戸籍(戸籍の氏又は名の文字が誤字で記載されているため、コンピュータによる取扱いに適合しない戸籍)や保存期間経過により既に廃棄された戸籍を指すということが分かりました。

戸籍のシステムにスキャンして取り込んだ戸籍であれば請求可能とのことでしたので、いわゆるコンピュータ戸籍(おおざっぱに言うと、横書きのフォーマットの現行の戸籍)しか請求できないわけではありません。

請求できる戸籍の種類は以下となります。

戸籍全部事項証明書(謄本)

②除籍全部事項証明書(謄本)

③除籍謄本

④改製原戸籍謄本


4.窓口に来た人の本人確認

広域交付で戸籍を請求できる人(上記2参照)が市区町村役場の窓口に直接出向く必要があり、郵送による請求はできません。

窓口では本人確認のために顔写真付きの公的な身分証を提示する必要があります。

具体的には、以下のものになります。

・運転免許証

・マイナンバーカード

・パスポート

・在留カード

・特別永住者証明書  など



5.実務への影響について

広域交付制度の運用が開始されましたが、現時点ではうまく稼働していない自治体も多いようです。

法務省と各地の役場を結ぶシステムにアクセスが集中しているため、戸籍の発行にかなり時間がかかったり、自治体によっては広域交付を停止したりしています。

これまで、司法書士はお客様から相続登記などのご依頼があったときは職権で本籍地の役所に戸籍を請求していました。

これから広域交付制度の運用がうまくいけば、お客様ご自身で最寄りの役所で戸籍の広域請求をしてもらい、司法書士が不足分を職務上請求するという選択肢も増えると思います。

個人的な感想としては、司法書士は広域請求できない(今までどおり本籍地に請求しなければならない)点が惜しいと感じています。

ですが、1か所でまとめて戸籍を請求できるのは戸籍収集の負担を軽減する制度として魅力的な制度だと思うので今後に期待したいと思います。

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